出所した受刑者がよく使う言葉に「やっぱりシャバの空気はうめえな!」というのがありますね。
この場合のシャバは刑務所の外の世界。いわゆる一般社会のことですが、そもそも何で「シャバ」なの?と思ったことはありませんか?
そこで、シャバの語源と意味について調べてみました。
シャバの語源は?
シャバはもともとは仏教用語です。
古代インドの文語であるサンスクリット、いわゆる梵語の「sahā, サハー」が語源。
釈迦が生きとし生けるものを仏道に導くこの世のことで、仏教における三千世界の総称です。
漢字では、「娑婆」と書きます。
「娑」は衣のそでをゆらゆらとなびかせて舞うさま。
「婆」は年とった女性のこと。
どちらも梵語(ぼんご)の音訳に使う漢字で、当て字のようなもの。
漢字の意味とは関係ありません。
ちなみに、般若心経も梵語を漢字に書き写したものです。
シャバ(娑婆)の意味
娑婆の語源である「サハー」には、「忍土(にんど) 」という意訳語もあります。
「苦しみを耐え忍ぶ場所」という意味を持ち、中国では「堪忍土」と漢訳されます。
この世は、耐え忍ばなければならない世界であるということ。
苦しみを耐え忍ぶ場所がシャバ(娑婆)なのです。
シャバ(娑婆)の本来の意味から言えば、「空気がうまい」世界ではありません。
では、なぜ「シャバの空気はうまい」というようになったのでしょうか?
シャバ(娑婆)は江戸時代の遊郭で使われていた言葉
江戸時代、吉原などの遊郭は、心ゆくまで遊べる場所であることから、遊郭は「浄土」に見立てられていました。
一方、遊女にとっては、郭(くるわ)の外の世界こそが自由な世界で、娑婆と呼んでいました。
こうした「遊女から見た言葉」の意味合いが徐々に一般的になっていったのです。
それがやがて軍隊や刑務所などの拘束される場所と自由に過ごせる外の世界を対比させ、肯定的な意味合いで娑婆と言うようになったのです。
シャバい、シャバ僧の意味は?
シャバに関連した言葉に「シャバい」「シャバ僧」という言葉がありますが、これはどういう意味かご存知でしょうか?
「シャバい」は「冴えない」「ダサい」「根性なし」という意味。
1980年代後半に当時のヤンキーたちの間で使われた言葉です。
「シャバ僧」は「根性のないヤツ」という意味です。
おわりに
いかがだったでしょうか?
シャバは、もともとは「空気がうまい」世界ではありません。
仏教で言う修行の場だったんですね。
かつては受刑者にとって、空気のうまい場所だったはずのシャバ(娑婆)ですが、最近はそうでもないようです。
いろんな問題が起きており、住みづらい世界になってきています。
そういう意味では、シャバは本来の仏教用語の意味になりつつあるのかもしれませんね。