「お客さんから怒鳴られているけど、警察を呼んでもいい?」
「暴言だけで110番するのは大げさ?」
「帰ってくださいと言っても居座る客にはどう対応すればいい?」
接客業で問題になっているのが、顧客から従業員への暴言や威圧、過剰な要求などの「カスタマーハラスメント(カスハラ)」です。
結論からいうと、カスハラだから必ず警察を呼べるというわけではありませんが、身の危険を感じる行為や犯罪に該当する可能性がある行為があれば、警察への通報をためらう必要はありません。
特に暴力を振るわれた、物を壊された、「殺すぞ」などと脅された、退店を求めても居座り続けているといった場合は、警察への通報を検討すべき状況です。
一方、単なる苦情や店員との言い争いなど、緊急性の低いトラブルでは110番ではなく「#9110(警察相談専用電話)」などへの相談が適している場合もあります。
この記事では、カスハラで警察を呼んでいいケース、暴言だけでも110番できるのか、警察を呼ぶ判断基準や従業員が身を守るための対応方法について分かりやすく解説します。

カスハラで警察を呼んでいい?
カスハラを受けたとき、状況によっては警察を呼んでも問題ありません。
「相手はお客様だから」
「警察を呼んだら大ごとになりそう」
と我慢してしまう人もいますが、顧客だからといって暴力や脅迫などが許されるわけではありません。
たとえば、
- 店員を殴る・蹴る
- 胸ぐらをつかむ
- 「殺すぞ」などと脅す
- 商品や店内設備を壊す
- 店員につきまとう
- 店から出るよう求めても居座る
- 刃物など危険な物を持っている
- 今にも暴力を振るいそうなほど興奮している
といったケースでは、犯罪に該当する可能性があります。
従業員や周囲のお客さんに危険が迫っている場合は、110番通報を優先してよい状況と考えられます。
そもそもカスハラとは?
カスハラとは「カスタマーハラスメント」の略称です。
顧客や取引先などから行われるクレーム・言動のうち、要求内容や要求の手段・態様などが社会通念上不相当で、労働者の就業環境を害するものなどを指します。
たとえば、
「商品が壊れていたので交換してほしい」
と冷静に伝えるのは通常のクレームです。
一方、
「今すぐ土下座しろ!」
「SNSに名前を晒すぞ!」
などと従業員を威圧したり、長時間拘束したりする行為はカスハラとなる可能性があります。
重要なのは、正当なクレームとカスハラは同じではないということです。
カスハラで警察を呼ぶ基準は?
カスハラで警察を呼ぶか迷ったときは、「犯罪に該当する可能性があるか」「人の安全が脅かされているか」「緊急性があるか」が重要な判断材料になります。
特に次のようなケースでは警察への通報を検討しましょう。
1.殴る・蹴るなどの暴力を受けた
顧客から、
- 殴られた
- 蹴られた
- 突き飛ばされた
- 胸ぐらをつかまれた
- 物を投げつけられた
などの行為を受けた場合です。
こうした行為は暴行罪や傷害罪などに該当する可能性があります。
すでに暴力が始まっている、さらに暴力を振るわれる危険がある場合は、110番通報を検討すべき状況です。
2.「殺すぞ」などと脅された
カスハラでは、暴力だけでなく脅迫的な言動が問題になることもあります。
たとえば、
「殺すぞ」
「家まで行くからな」
「家族がどうなっても知らないぞ」
など、生命・身体などへの危害を告知するような発言です。
発言内容や状況によっては脅迫罪などに該当する可能性があります。
身の危険を感じた場合は、自分だけで解決しようとせず警察へ相談・通報しましょう。
3.商品や店の物を壊された
怒った顧客が、
- 商品を床に叩きつける
- レジを壊す
- 椅子や机を蹴って壊す
- 店のガラスを割る
などの行為をした場合、器物損壊罪などに該当する可能性があります。
暴れている最中で周囲にも危険が及ぶ場合には110番通報を検討します。
4.「帰ってください」と言っても居座る
店舗側から退店を求められたにもかかわらず、正当な理由なく居座り続けるケースにも注意が必要です。
状況によっては刑法上の不退去罪などに該当する可能性があります。
特に、
「責任者が来るまで絶対帰らない」
「店を閉めてもここにいる」
などと長時間居座り、業務を妨害している場合は、上司や責任者と連携して警察への相談を検討しましょう。
5.危険物を持っている
刃物などを持っている、あるいは凶器になり得る物を振り回している場合は非常に危険です。
従業員だけで取り押さえようとすると、けが人が出る可能性があります。
相手から距離を取り、周囲のお客さんの安全も確保したうえで、緊急性がある場合は110番通報します。
暴言だけでも警察を呼んでいい?
判断が難しいのが、
「暴言だけの場合でも警察を呼んでいいのか?」
というケースです。
単に、
「接客態度が悪い!」
「責任者を呼べ!」
と大声で苦情を言っているだけであれば、直ちに犯罪になるとは限りません。
しかし、暴言だから警察とは無関係とも限りません。
発言内容や行為によっては、
- 脅迫
- 強要
- 威力業務妨害
などの犯罪に該当する可能性があります。
また、犯罪に該当するかどうかを現場の従業員だけで正確に判断するのは困難です。
「危害を加えられそう」「エスカレートしていて怖い」など、現実に危険が迫っている場合は安全確保を優先しましょう。
110番と#9110はどう使い分ける?
警察へ相談する方法には「110番」と「#9110」などがあります。
大まかな目安は次のとおりです。
| 状況 | 相談先の目安 |
|---|---|
| 今まさに暴力を受けている | 110番 |
| 凶器を持って暴れている | 110番 |
| 「殺す」などと脅され危険が迫っている | 110番 |
| 店内で暴れ続けている | 110番 |
| 過去のカスハラについて相談したい | #9110など |
| 繰り返し来店する迷惑客について相談したい | #9110など |
| 今後の対応について警察に相談したい | #9110など |
110番は緊急の事件・事故を警察に知らせるための番号です。
一方、緊急ではないものの警察に相談したい場合には、警察相談専用電話「#9110」などを利用できます。
どちらにすべきか迷った場合でも、今まさに身の危険が迫っているなら安全を優先してください。
カスハラで警察を呼ぶ前に「警察呼びますよ」と言うべき?
必ずしも相手に警告してから通報する必要はありません。
比較的安全が確保されていて、
「これ以上大声を出される場合は対応を終了します」
「退店していただけない場合は警察へ相談します」
などと伝えることで相手が冷静になる場合もあります。
しかし、相手がすでに暴れている場合や凶器を持っている場合、警告によってさらに興奮する可能性もあります。
危険な状況で無理に「警察を呼びます」と宣言する必要はありません。
安全な場所へ移動して通報するなど、従業員と周囲の人の安全を優先しましょう。
店員個人の判断で警察を呼んでもいい?
勤務先にカスハラ対応マニュアルがある場合は、基本的にはそのルールに沿って対応します。
可能であれば、
店員
↓
上司・店長・責任者
↓
警察
という形で組織的に対応するのが望ましいでしょう。
ただし、今まさに暴力を振るわれているなど緊急性が高い状況で、責任者の許可を待っている余裕がない場合もあります。
生命や身体に危険が迫っている場合は、安全確保を最優先に考える必要があります。
企業側も「どの段階で110番するのか」をあらかじめ決めておくと、現場の従業員が判断しやすくなります。
カスハラを受けたら証拠を残しておく
カスハラが発生した場合は、可能な範囲で記録を残しておくことも重要です。
たとえば、
- 発生日時
- 場所
- 相手の特徴
- 具体的に言われた内容
- 要求された内容
- 暴力の有無
- 店内の防犯カメラ映像
- 対応した従業員
- 目撃者
- 警察へ相談した日時
などを記録します。
SNSやメール、問い合わせフォームなどを通じたカスハラなら、該当する投稿やメッセージなどを保存しておくことも考えられます。
後日警察や弁護士などへ相談する際、具体的な状況を説明しやすくなります。
カスハラ対応でやってはいけないこと
カスハラを受けると、従業員側も感情的になってしまうことがあります。
しかし、
「うるさい!」
「二度と来るな!」
などと売り言葉に買い言葉で応酬すると、トラブルがさらに大きくなる可能性があります。
また、危険な相手を一人で取り押さえようとするのも避けたほうが安全です。
基本的には、
距離を取る→複数人で対応する→責任者へ報告する→必要に応じて警察へ通報・相談する
という流れを意識しましょう。
会社側にもカスハラ対策が求められている
カスハラを「接客業だから仕方がない」「店員が我慢すればいい」と考えるのは適切ではありません。
企業側には、従業員が一人で対応を抱え込まないよう、
- カスハラ対応方針を決める
- 対応マニュアルを作る
- 相談窓口を設ける
- 従業員教育を行う
- 警察へ通報する基準を決める
- 悪質なケースでは弁護士などと連携する
といった体制づくりが重要です。
現場の従業員に「お客様だから何とかして」と丸投げするのではなく、組織として対応することが求められます。
カスハラと警察についてよくある質問
Q. 客に怒鳴られただけで110番していい?
単に声が大きいというだけで直ちに犯罪になるとは限りません。
ただし、脅迫的な発言がある、暴力へ発展しそう、業務を妨害し続けているなど、緊急性や危険性が高い場合は110番を検討します。
緊急性が低く今後の対応を相談したい場合は、#9110などの利用も選択肢です。
Q. 客が帰らない場合は警察を呼べる?
退店を明確に求めたにもかかわらず居座り続ける場合、状況によっては不退去罪などに該当する可能性があります。
長時間居座って業務に重大な支障が出ている場合などは、警察への相談を検討しましょう。
Q. 「警察を呼ぶぞ」と客に言ってもいい?
状況によっては、退店しない場合などに「警察へ相談します」と冷静に伝えることが考えられます。
ただし、すでに暴れている相手などに伝えることで危険が増す場合は、無理に警告する必要はありません。
Q. 警察を呼んだら必ず逮捕される?
警察へ通報したからといって、相手が必ず逮捕されるわけではありません。
警察が現場の状況や行為などを確認し、その後の対応が判断されます。
Q. カスハラされた後から警察に相談できる?
できます。
緊急性がない場合には、最寄りの警察署や警察相談専用電話「#9110」などへの相談を検討できます。
記録や映像、メッセージなどが残っている場合は保存しておきましょう。
まとめ|危険を感じるカスハラなら警察への通報をためらわない
「カスハラで警察を呼んでいい?」という疑問については、暴力・脅迫・器物損壊・不退去など、犯罪に該当する可能性がある行為や身の危険がある場合は、警察への通報を検討して問題ありません。
特に、
今まさに暴力を受けている・凶器を持っている・危害を加えられそう
といった緊急性の高い状況では110番が選択肢になります。
一方、緊急性はないものの、繰り返されるカスハラへの対応などを警察に相談したい場合には「#9110」などを利用できます。
重要なのは、「お客様だから我慢しなければならない」と従業員一人で抱え込まないことです。
相手との距離を取り、上司や責任者と連携し、必要に応じて警察や弁護士などの専門家へ相談しましょう。
カスハラ対応では、顧客対応を続けることよりも従業員や周囲のお客さんの安全を守ることが優先される場面があります。
※本記事は一般的な情報を解説したもので、個別の行為が犯罪に該当するかどうかを判断するものではありません。実際に危険が迫っている場合は110番、緊急性のない警察相談については#9110や最寄りの警察署などを利用してください。






