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「目を閉じて、赤いリンゴを思い浮かべてください」

そう言われたとき、頭の中に赤いリンゴの形や色を思い描ける人は多いでしょう。

ところが、リンゴがどんなものかは知っているのに、頭の中に映像として思い浮かべることができない人もいます。

こうした特性は「アファンタジア(Aphantasia)」と呼ばれています。

「アファンタジアとは病気なの?」

「頭の中が真っ暗ってどういうこと?」

「メリットはある?」

「記憶力や勉強に影響するの?」

など、気になっている人も多いのではないでしょうか。

結論からいうと、アファンタジアは頭の中で視覚的なイメージを意図的に思い浮かべることが難しい、またはできない特性を指します。

一方で、単純に「想像力がない」という意味ではありません。

この記事では、アファンタジアとは何なのか、特徴やメリット・デメリット、記憶や夢との関係についてわかりやすく解説します。 

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アファンタジアとは?

アファンタジア(Aphantasia)とは、頭の中に視覚的なイメージを思い浮かべる能力が極端に弱い、またはない状態を指す言葉です。

たとえば、

「海辺に沈む夕日を想像してください」

と言われたとします。

多くの人は、

  • オレンジ色の太陽
  • 青い海
  • 砂浜
  • 空の色

などを、鮮明さには個人差があるものの頭の中に思い浮かべることができます。

一方、アファンタジアの人の場合、

夕日や海が何なのかは理解できるものの、その映像自体が頭の中に現れない

ということがあります。

「考えることができない」のではなく、「視覚的に思い浮かべる感覚がない」という点がポイントです。

アファンタジアは「想像力がない」という意味ではない

アファンタジアについて最も誤解されやすいのが、

「頭に映像が浮かばない=想像力がない」

と思われてしまうことです。

これは同じ意味ではありません。

たとえば「空を飛ぶ猫」という架空の存在について考える場合。

頭の中に実際の映像として猫が空を飛んでいる姿が浮かばなくても、

「猫に翼があって空を飛んでいる」

という概念自体を考えることはできます。

つまり、

イメージする能力と、アイデアを考える能力は別物

なのです。

アファンタジアでも、小説を書いたり、絵を描いたり、デザインをしたりする人はいます。

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アファンタジアは病気なの?

「自分も頭の中に映像が出てこない。病気なのでは?」

と不安になる人もいるでしょう。

アファンタジアは一般的に、それ自体が精神疾患や知的障害を意味するものではありません。

生まれつき視覚イメージを思い浮かべにくい人も多く、自分ではそれが普通だと思って生活しているケースもあります。

そのため大人になって、

「他の人って本当に頭の中で映像を見ているの?」

と初めて違いに気付くこともあります。

ただし、脳の病気やけがなどの後に、それまでできていた視覚イメージが急にできなくなった場合は事情が異なります。

突然の変化がある場合には、アファンタジアだと自己判断せず医療機関に相談することが大切です。

アファンタジアの人はどのくらいいる?

アファンタジアは非常に珍しい現象のように思えますが、人口の数%程度にみられる可能性があるとする研究があります。

ただし、「どの程度イメージできなければアファンタジアなのか」という線引きや調査方法によって数字は変わります。

そもそも頭の中の映像は他人と直接比較できません。

「私は鮮明に見える」

「なんとなく浮かぶ」

「ほとんど見えない」

といった感覚を客観的に数値化するのが難しいため、正確な割合については現在も研究が続いています。

アファンタジアのメリットは?

アファンタジアという言葉だけを見ると「できないこと」に注目しがちですが、必ずしもデメリットだけとは限りません。

研究段階の部分もありますが、当事者が利点として感じることのある特徴を見ていきましょう。

1.嫌な映像を頭の中で繰り返しにくいことがある

過去に見た怖い場面やショッキングな映像を、何度も頭の中で再生してしまう人がいます。

視覚イメージが非常に弱い人の場合、そうした場面を鮮明な映像として再体験しにくい可能性があります。

たとえば怖い映画を見た後、

「目を閉じるとあのシーンが浮かんで怖い」

という経験が比較的少ない人もいます。

ただし、アファンタジアだから嫌な記憶や感情が残らないという意味ではありません。

映像が浮かばなくても、不快な出来事そのものは記憶できます。

2.論理や言葉を使って考えるのが得意な人もいる

視覚イメージに頼らず、

言葉・概念・事実・ルール

などを使って物事を考える人もいます。

たとえば何かを覚えるとき、

「映像として記憶する」

のではなく、

「文章や情報として覚える」

といった方法です。

そのため本人に合った方法が見つかれば、視覚化に頼らない学習方法を発達させている場合があります。

ただし、「アファンタジア=論理的思考能力が高い」ということが確立しているわけではありません。

個人差が大きい点には注意が必要です。

3.怖い話を聞いても映像が浮かびにくい

これは日常生活でメリットとして感じる人がいるかもしれません。

たとえば、

「夜道に血だらけの幽霊が立っている」

という怖い話を聞いたとします。

映像を鮮明に想像できる人の場合、その場面が頭の中に浮かび、夜になって思い出してしまうことがあります。

アファンタジアの場合は、文章として内容を理解しても映像そのものが鮮明に浮かばないことがあります。

ホラー作品などに対する感じ方にも違いが出る可能性があります。

4.過去の映像に引っ張られにくい可能性がある

過去の出来事を映像として鮮明に思い出せる人は、昔の恥ずかしい場面などが突然頭に浮かぶことがあります。

視覚的な再体験が弱いアファンタジアでは、このような「頭の中の映像」による影響が比較的小さい場合があります。

ただし、これも「嫌な記憶がない」という意味ではありません。

アファンタジアのデメリットは?

一方、視覚イメージを利用する場面では不便を感じることがあります。

代表的なものを紹介します。

1.人の顔を思い出しにくいことがある

家族や友人の顔を見れば、

「この人は○○さんだ」

と認識できても、目を閉じてその人の顔を思い浮かべようとすると映像が出てこない場合があります。

そのため、

「お母さんの顔を思い浮かべて」

と言われても、顔の特徴は説明できるのに映像としては浮かばないことがあります。

ただし、これは「相貌失認」と同じものではありません。

実際に見ている顔を認識する能力と、頭の中で顔をイメージする能力は別です。

2.昔の思い出を映像として振り返りにくい

旅行や卒業式、結婚式など、大切な思い出を頭の中で映像として再生することが難しい場合があります。

たとえば、

「高校時代の教室を思い出して」

と言われたとき、

「窓側に自分の席があった」

「黒板が前にあった」

という事実は覚えていても、その教室の映像自体は浮かばないことがあります。

そのため写真や動画が、記憶を振り返る重要な手掛かりになる人もいます。

3.「頭の中で想像してください」という勉強法が合わないことがある

学校の授業では、

「頭の中で図形を回転させてみましょう」

「歴史の場面をイメージしましょう」

「物語の情景を想像しながら読みましょう」

などと言われることがあります。

視覚イメージを作りにくい人にとっては、このような説明が役に立たない場合があります。

その場合は、

図を書く・実物を見る・文章にする・声に出す

など別の方法を利用した方が理解しやすいことがあります。

4.小説の風景描写がイメージしにくい

小説を読んだとき、

「主人公が赤い屋根の家の前に立っていた」

という文章を読んで、その光景が映画のように頭に浮かぶ人がいます。

アファンタジアの場合、文章の意味は理解できても映像として浮かばないことがあります。

そのため長い風景描写より、

  • 会話
  • ストーリー
  • 設定
  • 人間関係
  • 論理展開

などに魅力を感じる人もいるでしょう。

もちろん読書の楽しみ方には大きな個人差があります。

アファンタジアでも夢を見る?

「頭の中に映像が浮かばないなら、夢も映像なしなの?」

と疑問に思う人も多いでしょう。

興味深いことに、アファンタジアでも視覚的な夢を見る人はいます。

これは、

「意識的に映像を思い浮かべること」

と、

「睡眠中に夢の映像が生まれること」

が必ずしも同じ仕組みではないためと考えられています。

一方で、夢そのものが少なかったり、視覚的な夢をあまり経験しなかったりする人もいます。

アファンタジアの中でも個人差は非常に大きいのです。

アファンタジアでも絵は描ける?

もちろん描けます。

「頭に絵が浮かばないのに、どうやって描くの?」

と思うかもしれません。

しかし絵を描く方法は、頭の中の完成画像をそのまま紙に写すだけではありません。

たとえば、

  • 資料を見る
  • 写真を参考にする
  • 構図を試しながら決める
  • 形についての知識を利用する
  • 下書きを何度も修正する

といった方法でも作品は作れます。

実際、アファンタジアを公表しているクリエイターもいます。

つまり、

アファンタジア=芸術が苦手

というわけではありません。

アファンタジアと記憶力の関係は?

アファンタジアだから記憶力が悪い、と単純に決めることはできません。

人間の記憶にはさまざまな種類があります。

たとえば、

「昨日、東京駅へ行った」

という事実を覚えていることと、

「昨日見た東京駅の風景を頭の中に映像として再現する」

ことは別です。

アファンタジアでは後者が難しくても、前者の情報を覚えていることはできます。

そのため、

「覚えていない」のではなく、「映像として思い出せない」

というケースがあります。

アファンタジアかどうか確認する方法は?

アファンタジアを知った人がよく試すのが「リンゴテスト」です。

目を閉じて赤いリンゴを想像してみます。

そのとき、

① 写真のように鮮明に見える
② かなりはっきり見える
③ ぼんやり見える
④ ほとんど見えない
⑤ 映像はまったく見えない

といった違いがあります。

⑤に近いからといって、それだけで医学的にアファンタジアと確定するわけではありません。

研究では「VVIQ(Vividness of Visual Imagery Questionnaire)」という質問票などが、視覚イメージの鮮明さを調べるために利用されています。

ただし、ネット上の簡易テストだけで自己診断することには注意が必要です。

アファンタジアの反対「ハイパーファンタジア」とは?

アファンタジアの対極として知られているのが、

ハイパーファンタジア(Hyperphantasia)

です。

これは頭の中のイメージが非常に鮮明な人を表す言葉です。

たとえばリンゴを想像しただけで、

  • 赤色の濃淡
  • 表面の光沢
  • ヘタ
  • 背景

まで写真のように鮮明に思い浮かべられる人もいます。

つまり視覚イメージ能力は、

まったく映像が浮かばない ←――→ 写真のように鮮明

という連続的なスペクトラムとして考える方がわかりやすいでしょう。

アファンタジアのメリット・デメリットまとめ

簡単に整理すると次のようになります。

項目 特徴
視覚イメージ 頭の中で映像を作るのが難しい
想像力 想像力がないわけではない
記憶 事実を覚えていても映像として再現しにくいことがある
メリット 不快な映像を鮮明に再体験しにくい可能性など
デメリット 顔・風景・思い出を頭の中で映像化しにくい
勉強 視覚化を前提とした学習法が合わない場合がある
読書 情景が映像として浮かばない場合がある
視覚的な夢を見る人もいる
創作 絵や小説などの創作活動も可能

重要なのは、これらがすべてのアファンタジアの人に当てはまるわけではないことです。

アファンタジアについてよくある疑問

アファンタジアは治す必要がある?

生まれつきアファンタジアで、日常生活に特に困っていないのであれば、必ずしも「治さなければならないもの」と考える必要はありません。

視覚イメージの個人差の一つとして研究されています。

一方、それまで映像を想像できていたのに突然できなくなった場合などは、医療機関への相談を検討してください。

アファンタジアだと勉強が苦手?

必ずしもそうではありません。

映像化する勉強法が合わなくても、文章、音声、図、反復など別の方法を利用できます。

重要なのは自分に合った学習方法を見つけることです。

アファンタジアでも想像できる?

できます。

「映像として見ること」と「概念として想像すること」は別です。

架空の物語を考えたり、新しいアイデアを生み出したりすることも可能です。

アファンタジアは障害?

アファンタジアそのものを一律に「障害」と考えるのは適切ではありません。

日常生活への影響も人によって大きく異なります。

まとめ

アファンタジアとは、頭の中で視覚的なイメージを意図的に思い浮かべることが難しい、またはできない特性です。

ポイントをまとめると、

  • 頭の中に映像を思い浮かべにくい
  • 「想像力がない」という意味ではない
  • 生まれつきの人もいる
  • 人口の数%程度にみられる可能性がある
  • 嫌な場面を映像として再体験しにくいことがある
  • 一方で、顔や思い出を映像として振り返りにくい場合がある
  • 視覚化を使った勉強法が合わないこともある
  • アファンタジアでも視覚的な夢を見る人がいる
  • 絵や小説などの創作活動もできる
  • 反対に、非常に鮮明なイメージを作れる「ハイパーファンタジア」もある

「リンゴを想像してください」と言われたとき、本当に赤いリンゴが“見える”人もいれば、「リンゴについて考えているだけ」で映像はまったく見えない人もいます。

普段は他人の頭の中を見ることができないため、こうした違いに何十年も気付かないケースも珍しくありません。

アファンタジアは「能力が足りない」と単純に捉えるものではなく、人によって大きく異なる“頭の中で情報を扱う方法”を理解するための興味深い特性の一つと考えるとわかりやすいでしょう。

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