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円安が急速に進むと、ニュースでよく聞くのが、

「政府・日銀による円買い介入」

という言葉です。

数兆円規模の為替介入が行われることもあるため、

「そんな巨額のお金はどこから出てくるの?」

「税金を使って円を買っているの?」

「日銀がお金を刷っている?」

「日本が持っている米国債を売るの?」

と疑問に思う人も多いでしょう。

結論からいうと、円買い介入では主に、政府の「外国為替資金特別会計(外為特会)」が保有している外貨資産を使います。

簡単にいうと、

保有しているドルなどの外貨を売る

その代わりに円を買う

という取引です。

つまり、円買い介入のたびに新たに税金を集めたり、日本銀行が円を大量に発行したりしているわけではありません。

政府が過去の円売り介入などによって積み上げてきた外貨資産が主な原資になります。

この記事では、円買い介入の資金はどこから出るのか、外為特会や外貨準備との関係、米国債を売るのか、円売り介入とは何が違うのかまで初心者向けに分かりやすく解説します。

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円買い介入の資金はどこから出る?

円買い介入の資金の中心となるのが、

外国為替資金特別会計

です。

一般に「外為特会(がいためとっかい)」と呼ばれています。

外為特会は、外国為替相場の安定を目的とした為替介入などを行うために設けられている国の特別会計です。

円安を抑えるための円買い介入では、

外為特会が保有するドルなどの外貨資産を売却して円を購入します。

たとえば単純化すると、

政府が10億ドル持っている

外国為替市場で10億ドルを売る

代わりに円を買う

という取引です。

この「ドルを売って円を買う」動きによって、市場ではドル売り・円買いの需要が発生し、急激な円安を抑える方向に働くことが期待されます。

そもそも「円買い介入」とは?

円買い介入とは、政府が外国為替市場で外貨を売り、円を買うことです。

主に急激な円安が進んだときに行われます。

たとえば、

1ドル=150円

1ドル=155円

1ドル=160円

と短期間で急激に円安が進んだとします。

政府が、

「為替相場の動きが急すぎる」

と判断した場合、ドルなどを売って円を買う介入を行うことがあります。

これが、

ドル売り・円買い介入

です。

目的は、特定の為替レートに固定することではなく、為替相場の急激な変動を抑え、安定化を図ることです。

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円買い介入を決めるのは日銀?

ニュースでは、

「政府・日銀が為替介入」

と表現されることがあります。

そのため、

「介入するかどうかを決めるのは日本銀行」

と思う人もいるかもしれません。

しかし、日本で為替介入を決定する権限を持つのは財務大臣です。

日本銀行は、財務大臣の代理人として実際の市場取引を行います。

つまり、

財務省・財務大臣
→ 為替介入を決定・指示

日本銀行
→ 実際に市場でドルを売ったり円を買ったりする

という役割分担です。

外貨準備とは?

円買い介入を理解するうえで重要なのが、

外貨準備

です。

外貨準備とは、政府や中央銀行などが保有している外貨建ての資産です。

日本では、

  • 外貨建て証券
  • 外貨預金
  • IMF関連資産

などが外貨準備に含まれます。

財務省は、外貨準備について「為替介入などの原資」となる資産として毎月残高を公表しています。

そのため円買い介入は、

日本が持っている外貨準備の一部を使って円を買う

と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ日本は大量のドルを持っているの?

ここで、

「そもそも日本政府はなぜそんなにドルを持っているの?」

という疑問が出てきます。

大きな理由の一つが、過去に行ってきた円売り・ドル買い介入です。

円高が急激に進んだとき、日本政府は円を売ってドルなどの外貨を買う介入を行ってきました。

その際に購入したドルなどの外貨が、外為特会の資産として蓄積されてきました。

つまり、

過去の円売り介入

円を売る

ドルを買う

外貨資産が増える

という流れです。

現在の円買い介入では、その反対の取引を行っています。

円売り介入の資金はどこから出る?

円買い介入と比較すると非常に分かりやすくなります。

円売り・ドル買い介入

急激な円高を抑えたい場合、

円を売ってドルを買います。

このとき政府は、政府短期証券を発行して円資金を調達し、その円を外国為替市場で売って外貨を購入します。

円買い・ドル売り介入

急激な円安を抑えたい場合、

ドルなどの外貨を売って円を買います。

こちらは外為特会がすでに保有している外貨資産を売却して円を調達します。

つまり、

円売り介入
→ 円資金を調達してドルを買う

円買い介入
→ 持っているドルを売って円を買う

という違いです。

円買い介入の資金は税金なの?

多くの人が気になるポイントです。

結論からいうと、

円買い介入のたびに、国民から新たに税金を徴収して介入資金にしているわけではありません。

介入に使うのは、外為特会が保有している外貨資産です。

ただし、「だから税金とはまったく無関係」と単純に言い切るのも正確ではありません。

外為特会は国の特別会計であり、その利益の一部は一般会計へ繰り入れられる仕組みがあります。

つまり外為特会の資産や利益は国の財政とも関係しています。

しかし、

「円買い介入で5兆円使ったから、国民の税金5兆円が消えた」

という理解は正しくありません。

実際には、

5兆円相当の外貨資産を売り、代わりに円資産を取得した

という資産交換に近い取引です。

円買い介入でお金が「消える」わけではない

為替介入について、

「政府が5兆円使った」

と報道されると、

「5兆円がなくなった」

ように感じるかもしれません。

しかし実際には、

ドル資産

円資産

へ変換しているだけです。

たとえば、

10億ドル売却

1,500億円を購入

という介入を行えば、外貨資産は減りますが、その代わりに円を取得します。

その円は、外為特会の政府短期証券の償還などに充てられます。

そのため、為替介入を単純な「支出」と考えると仕組みを誤解しやすくなります。

米国債を売って円を買うの?

日本の外貨準備には、外貨建ての証券などが含まれています。

外為特会が保有する外貨資産については、安全性・流動性に留意しながら運用されており、外貨建て債券などが含まれます。

そのため円買い介入では、必要に応じて外貨建て債券を売却するなどしてドル資金を確保し、そのドルを外国為替市場で売って円を購入します。

このため、

「日本が保有している米国債などが介入資金の原資になり得る」

という理解は概ね正しいです。

ただし、

「介入するたびに必ず米国債をその場で大量売却している」

と単純化するのは適切ではありません。

外為特会には流動性のある外貨資産があり、実際の資金管理は複数の資産を組み合わせて行われます。

米国債を売るとアメリカの許可が必要?

「日本が米国債を大量に売るなら、アメリカ政府の許可が必要なのでは?」

と思う人もいるかもしれません。

通常、市場で保有している米国債などの証券を売却すること自体に、米政府の個別の許可を受ける仕組みではありません。

ただし、巨額の為替介入は国際金融市場へ影響を及ぼすため、各国当局との情報共有や政策協調が重要になります。

特に為替政策については、G7などでも「為替レートは市場で決定されること」や「過度な変動は望ましくない」といった考え方が共有されてきました。

そのため日本が介入を行う際にも、米国を含む海外当局との関係が無関係というわけではありません。

円買い介入には限界がある?

あります。

円買い介入では、政府が保有している外貨資産を売る必要があります。

そのため理論上、

保有する外貨以上のドルを売ることはできません。

円売り介入の場合は、政府短期証券を発行して円資金を調達できるため、円買い介入とは資金面の性質が異なります。

円買い介入には外貨準備という実物の「弾」が必要です。

このことから市場では、

「政府にはあとどれだけ介入余力があるのか?」

が注目されることがあります。

では外貨準備を全部使えばいい?

理論上の介入余力があるからといって、外貨準備をすべて為替介入に使うわけにはいきません。

外貨準備には、

  • 為替市場の安定
  • 国際的な支払いへの備え
  • 金融市場の信用維持
  • 緊急時への備え

など重要な役割があります。

外貨準備を極端に減らせば、

「日本は外貨を十分持っていないのでは?」

と市場から受け取られる可能性もあります。

そのため介入は外貨準備の残高だけではなく、為替市場の状況や国際的な影響などを踏まえて判断されます。

為替介入をすると外貨準備は減る?

円買い・ドル売り介入を行えば、基本的にドルなどの外貨資産を売るため、外貨準備は減少する方向に働きます。

逆に円売り・ドル買い介入を行えば、ドルなどを購入するため外貨資産は増える方向に働きます。

ただし外貨準備のドル換算額は、

  • 為替レート
  • 債券価格
  • 金価格
  • 運用収益

などによっても変動します。

そのため、

「外貨準備が前月より10億ドル減った=10億ドル介入した」

と単純に判断することはできません。

実際の介入額は財務省が別途公表しています。

円買い介入で政府は儲かることがある?

これは興味深いポイントです。

過去に円高だった時期にドルを購入し、その後円安になってからドルを売ると、円換算では利益が出る場合があります。

たとえば単純化して、

1ドル=100円のときに1ドル購入

その後、

1ドル=150円のときに売却

すれば、

100円で購入したドルが150円になります。

為替差益だけを見ると50円の利益です。

日本政府が過去に円高局面で大量のドルを購入してきたことを考えると、円安局面での円買い介入では大きな円換算差益が発生する可能性があります。

ただし実際の外為特会では、取得時期や運用収益、政府短期証券の利払いなどさまざまな要素が絡むため、

介入額=そのまま利益

ではありません。

外貨準備の運用益はどうなる?

外為特会が保有する外貨資産は、ただ現金で保管されているわけではありません。

外貨建て債券などで運用され、利子収入などが発生します。

一方、円資金を調達するために発行した政府短期証券には利払いなどの支出があります。

外為特会では、

外貨資産から得られる利子収入など

政府短期証券の利払いなど

を経理しています。

その結果生じた利益である決算上の剰余金は、一部を外為特会に残し、残りを一般会計などへ繰り入れる仕組みです。

なぜ円買い介入をするの?

円安になること自体が必ず悪いわけではありません。

円安には、

  • 輸出企業の利益が増えやすい
  • 海外から日本への旅行が割安になる
  • 海外で稼いだ利益の円換算額が増える

といったメリットもあります。

一方、急激な円安では、

  • ガソリン
  • 電気・ガス
  • 食品
  • 原材料
  • 海外旅行

などの価格上昇につながる可能性があります。

政府が特に問題視するのは、為替レートの水準だけでなく、短期間で一方向へ急激に動くことです。

そのため投機的な動きなどによって急速に円安が進んだ場合、為替介入が選択肢になります。

円買い介入をすれば必ず円高になる?

必ずではありません。

介入直後には大量のドル売り・円買いが発生するため、為替相場が円高方向へ大きく動く場合があります。

しかし為替レートは、

  • 日本と海外の金利差
  • 日本銀行の金融政策
  • FRBの金融政策
  • 景気
  • インフレ率
  • 国際情勢
  • 投資家の期待

など多くの要因で動きます。

そのため根本的に円安となっている原因が変わらなければ、介入後に再び円安方向へ戻ることもあります。

為替介入は、

「好きな為替レートに固定できる魔法の手段」

ではありません。

何兆円も介入する意味はある?

外国為替市場では毎日非常に巨額の資金が取引されています。

そのため数千億円程度では市場全体に与えるインパクトが小さい場合があります。

政府が市場参加者へ、

「急激な円安を容認しない」

という強いメッセージを示すため、介入が兆円単位になるケースがあります。

また実際にドル売り・円買いを行うだけでなく、

「政府がまた介入するかもしれない」

と市場参加者に意識させる効果もあります。

この警戒感によって投機的な円売りを抑える狙いもあります。

「口先介入」とは?

実際にお金を使わなくても、政府高官が、

「過度な変動にはあらゆる選択肢を排除せず対応する」

「投機的な動きを高い緊張感を持って注視している」

などと発言することがあります。

市場ではこれを、

「口先介入」

と呼ぶことがあります。

政府が、

「本当に為替介入するかもしれない」

と市場参加者に意識させることで、急激な円売りを抑えようとするものです。

口先介入だけなら、外貨準備を使う必要はありません。

覆面介入とは?

為替介入には、

覆面介入

と呼ばれるものもあります。

これは介入を行ったその場で政府が、

「今、介入しました」

と発表しないケースです。

為替市場が突然大きく動くと、

「これは政府の介入では?」

と市場参加者が推測します。

その後、財務省が公表する為替介入実績によって確認されます。

介入の具体的なタイミングや方法を明らかにしないことで、市場参加者に警戒感を持たせる狙いもあると考えられます。

円買い介入と円売り介入の違い

最後に整理してみましょう。

項目 円買い介入 円売り介入
主な状況 急激な円安 急激な円高
取引 ドルなどを売って円を買う 円を売ってドルなどを買う
主な資金 外為特会の外貨資産 政府短期証券で調達した円
外貨準備 減る方向 増える方向
市場への効果 円高方向を狙う 円安方向を狙う

最も重要なのは資金調達の違いです。

円買い介入には、すでに保有しているドルなどの外貨が必要

という点を覚えておくと理解しやすいでしょう。

円買い介入の資金を一言でいうと?

一言でまとめるなら、

「日本政府が外為特会で保有しているドルなどの外貨資産」

です。

その外貨の多くは、過去の円売り介入などで取得し、外貨建て債券などとして運用されてきたものです。

円安時にはそれらを売り、円を買います。

つまり、

過去:円を売ってドルをためる

現在:ためたドルを売って円を買う

という流れです。

よくある質問

Q. 円買い介入は税金を使っている?

介入のたびに新たな税金を集めてドルを用意するわけではありません。外為特会が保有する外貨資産を売却して円を購入します。

Q. 日銀がお金を刷って円買い介入する?

円買い介入では基本的にその逆で、保有するドルなどを売って円を取得します。日本銀行は財務大臣の代理人として取引を実行します。

Q. ドルはどこから持ってきた?

過去の円売り・ドル買い介入などによって政府が取得し、外為特会で保有・運用してきた外貨資産です。

Q. 米国債も売る?

外為特会は外貨建て債券などを保有しており、円買い介入では外貨建て債券の売却等によって外貨を調達する場合があります。

Q. 円買い介入には限界がある?

外貨資産を売って行うため、外貨準備には限りがあるという意味で資金面の上限があります。

Q. 介入したお金は消える?

ドルなどの外貨資産を円へ交換しているため、介入額と同額の資産が単純に消滅するわけではありません。

まとめ|円買い介入の資金は外為特会の外貨資産

今回は「円買い介入の資金はどこから出る?」という疑問について解説しました。

ポイントをまとめると、

  • 日本の為替介入は財務大臣の権限で行われる
  • 日本銀行は財務大臣の代理人として介入を実行する
  • 為替介入には外国為替資金特別会計(外為特会)の資金が使われる
  • 円買い介入ではドルなどの外貨を売って円を買う
  • 外貨は外為特会が保有している外貨資産から用意する
  • 外貨準備には外貨建て証券などが含まれる
  • 過去の円売り・ドル買い介入によって外貨資産が積み上がってきた
  • 円買い介入のたびに新たな税金を徴収するわけではない
  • 介入額がそのまま「消えるお金」というわけでもない
  • 外貨建て債券を売却してドルを調達する場合もある
  • 円買い介入を行うと外貨準備は減る方向に働く
  • 外貨準備には限りがあるため円買い介入にも資金面の限界がある
  • 円売り介入では政府短期証券を発行して円を調達する
  • 介入しても必ず長期的に円高になるとは限らない

ということになります。

円買い介入で数兆円という数字を見ると、

「そんな大金を税金から出して大丈夫なの?」

と思うかもしれません。

しかし実際には、政府が持っているドルなどの外貨資産を売却し、その代わりに円を取得する取引です。

特に覚えておきたいのは、

円買い介入=「ドルを売るためのドルが必要」

という点です。

そのドルを保有している財布のような存在が「外国為替資金特別会計」です。

為替介入のニュースを見るときは、

「政府が何兆円使った」ではなく、「外貨資産を何兆円分売って円へ交換した」

と考えると、仕組みが理解しやすくなるでしょう。

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