テレビのニュースなどでよく聞く「任命」という言葉。
政治家が「大臣に任命する」といった使い方をします。
簡単に言えば、「大臣に選ぶ」という意味ですが、他にもよく似た言葉があります。
それが「委嘱」です。
たとえば、「講師を委嘱する」というのは、「講師に選ぶ」という意味合いで使われます。
「講師に任命する」とは言いません。
では、「任命」と「委嘱」の違いは何なのか?
正しい使い方も紹介したいと思います。
任命の意味と正しい使い方
「任命」は辞書で調べると、「人をある地位または職につくよう命ずること」
しかし、これはいわゆる「官職」に対してのみ使われます。
厳密に言うと、
公務員でない特定の人に対して公務員の身分を与える行為。
これが「任命」です。
したがって、一般企業では使いません。
「○○君を課長に任命する」とは言いませんよね。
逆に一般人が公的機関の役職に就くときは「任命する」「任命された」と言います。
公務員の身分は、かつては一定の身分を持つ公務員の地位につける場合にだけ、「任命」という言葉が使われていました。
しかし、現在は国または地方公共団体から報酬を得て、職務を行う仕事に対しても「任命」という言葉を使うようになっています。
任命と指名の違い
「指名」とは「名前を出して指定すること」
もう少し詳しく言えば、「特定の人物を名指しして選ぶこと」です。
そして、指名された人を実際に職務に就くよう命じることを「任命」と言います。
たとえば、憲法の規定。
「天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する」
これが「指名」と「任命」の違いです。
委嘱の意味と正しい使い方
「委嘱」は「特定の仕事を一定の期間、他者に任せること」
行政機関だけでなく、ビジネスシーンでも使われます。
たとえば、「監査役を委嘱する」
公認会計士などの専門家に、自社の監査役を引き受けてもらう場合に「委嘱」という言葉を使います。
ポイントは委嘱される側は「特殊なスキルを持っている人」であること。
「社員研修で講師を委嘱する」
「CMソングを作曲家に委嘱する」
相手が専門家である時に使うのが「委嘱」です。
任命と委嘱の違い
任命と委嘱の違いを整理すると、
・任命は「公務員でない特定の人に対して公務員の身分を与える行為」
・委嘱は「特定のスキルを持った人に仕事や業務を依頼する行為」
同じ「依頼する」行為でも、
「任命」は「命ずる」
「委嘱」は「お願いする」
というニュアンス違いがあります。
ちなみに、「委嘱」は公的な仕事でも使われ、「審議会の委員を委嘱する」といった使い方もします。
嘱託 委託 委任の違い
「委嘱」とよく似た言葉に「嘱託」「委託」「委任」という言葉があります。
それぞれの意味は、
・「嘱託」 一定の業務、仕事を、正規の職員、社員以外の人に頼み任せること。
・「委託」 人や機関に仕事の依頼をすること。
・「委任」 問題の処理・審議・決定などを他の人に任せること。
「嘱託」と「委託」は、どちらも別の組織や人に仕事を任せることですが、「嘱託」の方がより専門性が高い人が対象になります。
たとえば、「嘱託医」など、特定の業務に関して専門的な経験や資格を持つものに対して一部の業務を任せることを言います。
おわりに
ということで、今回は任命と委嘱の違い、任命と指名の違い、嘱託 委託 委任の違いについて紹介しました。
どれもよく似た言葉ですが、ちゃんと意味の違いがあります。
これを機会に正しい使い方を覚えておきましょう。