国連の安全保障理事会には、常任理事国と非常任理事国という2種類のメンバーがいます。

常任理事国は、中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの5カ国で、恒久的に理事国の地位を保持しています。非常任理事国は、2年ごとに選出される10カ国で、連続再選はできません。

では、なぜ常任理事国は5カ国なのでしょうか?
その背景や意義について、この記事では詳しく解説します。

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常任理事国とは?

常任理事国とは、国連の安全保障理事会において、恒久的に理事国である国(国連憲章が改正されない限り)を指します。現在の常任理事国は以下の5カ国です。

• 中国
• フランス
• ロシア(旧ソ連から議席を継承)
• イギリス
• アメリカ

これらの5カ国は、第二次世界大戦の戦勝国として、1945年10月に発足した国連の安全保障理事会において、特別な地位と権限を与えられました。

その中でも最も重要なものが「拒否権」です。

拒否権とは?

拒否権とは、常任理事国が1カ国でも反対票を投じた場合、安全保障理事会の決議が採択されないという権利です。

これは手続き事項を除くすべての事項に適用されます。
つまり、常任理事国は自分たちに不利な決議を阻止することができるのです。

ロシアのウクライナ問題、アメリカのイスラエル問題がこじれるのは、この拒否権が大きく関係しています。

常任理事国が5カ国になった経緯

では、なぜ常任理事国は5カ国になったのでしょうか?
その答えは、第二次世界大戦の結果と冷戦の勃発にあります。

第二次世界大戦では、連合国側(アメリカ、イギリス、フランス、ソ連、中国など)と枢軸国側(ドイツ、イタリア、日本など)が対立しました。

戦争は1945年日本の降伏で終結しましたが、その時点で世界は大きく変わっていました。

まず、戦争で多くの犠牲者や被害を出したことで、世界平和を守るための新しい枠組みが必要だという認識が高まりました。

そこで1945年6月にサンフランシスコで開催された会議で、50か国が参加して「国際連合憲章」を採択しました。
これが国連の発足のきっかけです。

次に、戦争で最も力をつけたアメリカとソ連が対立するようになりました。

これは資本主義と共産主義という異なる政治・経済体制を持つ両者が、世界の覇権を争ったことが原因です。

この対立は冷戦と呼ばれる長期的な緊張状態を引き起こしました。

このような状況の中で、国連の安全保障理事会は世界の平和と安全の維持に責任を負う機関として設立されました。しかし、その構成は戦争の勝者であるアメリカ、イギリス、フランス、ソ連、中国の5カ国を常任理事国として優遇するものでした。

この考え方はすぐに問題に直面しました。なぜなら、冷戦の影響で常任理事国同士が対立し、拒否権を使って決議を阻止することが多くなったからです。

特にソ連は1946年から1955年までの10年間に75回も拒否権を行使しました。
これは安全保障理事会の機能不全を招きました。

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常任理事国の拡大や改革

常任理事国が5カ国に固定されていることは、現在の国際情勢や多様な利害に対応できないという批判があります。

実際、国連加盟国は1945年の51か国から2021年現在では193か国に増えています。
また、常任理事国以外にも世界的な影響力や貢献度を持つ国が多く存在します。

そこで、常任理事国の拡大や改革について様々な提案や議論が行われています。

例えば、以下のような案があります。

• 常任理事国に日本やドイツなどのG4諸国を加える
• 常任理事国にインドやブラジルなどの新興国を加える
• 常任理事国にアフリカやラテンアメリカなどの地域代表を加える
• 常任理事国を廃止して非常任理事国だけにする
• 常任理事国の拒否権を制限する

しかし、これらの案はいずれも常任理事国や他の加盟国の反対や利害衝突によって実現が困難です。

特に、常任理事国は自らの特権を失うことを嫌がります。

そのため、現在でも常任理事国は5カ国のままなのです。

まとめ

この記事では、「常任理事国はなぜ5カ国」という疑問について解説しました。

常任理事国は、第二次世界大戦後に形成された戦勝国中心の枠組みです。

しかし、世界は変化し続けています。21世紀の国連にふさわしい安全保障理事会とするためには、常任理事国の拡大や改革が必要だという声は高まっています。

国際社会は、この問題に対して積極的に取り組むべきではないでしょうか。

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