望まない妊娠によって出産をする方、出産をしたけど育てる事がむずかしくなってしまった方、一方で子どもを望んでいるが機会に出会わなかった方などが利用する「里親制度」と「養子縁組」というものがあります。
どちらも聞いた事のある言葉だけど具体的なことはよくわからない。
生みの親ではない人が子どもを育てることだけど、何が違うのか誰に聞いていいのかよくわからない。
妊娠、出産をした子どもをご自分で育てられない悩みはなかなか人には相談しにくい。
子どもを受け入れたいと考えているけれど受け入れた後の周りの反応などが気になってしまう。
受け渡す方と受け入れる方の両方が、安心して考える事ができるように、何が違うのか。わかりやすく解説します。
里親制度と養子縁組の違い
子どもと育てる人の間に血縁がない事だけど、そもそも何が違うのでしょうか。利用する場合に何を考えて制度を選べば良いのでしょうか。違いを確認しましょう。
仕組みの違い
「里親制度」
乳児院や児童養護施設の代わりに一般の家庭で子どもを預かって育てる福祉サービスです。
すでに生みの親の手元を離れている状態です。
「養子縁組」
生みの親と育てる親が個人的に同意して家庭裁判所に申立をして法的に親子関係を作ります。
普通養子縁組と特別養子縁組の2つがあります。
戸籍の違い
「里親制度」
預かる形なので戸籍に変更はありません。
「養子縁組」
育ての親の戸籍に入るので氏(苗字)が変わります。
費用の違い
「里親制度」
福祉サービスなので里親手当や養育費の支給などが育ての親に支給されます。
「養子縁組」
個人的なものなので国からの支給はありません。育ての親は受け入れる子どもを探す為に児童相談所や民間サービスを利用する為の費用を支払わなければいけません。
子どもとの関係の違い
「里親制度」
18歳まで(原則)で関係は終了します
「養子縁組」
続きます。
里親になるには?
里親になって子どもを受け入れたいけど、どうしたらいいのでしょうか?
① 児童相談所へ連絡をして説明を受けます。
里親制度のことをくわしく教えてくれます。疑問や不安の質問も出来ます。
包み隠さずお話されるのが良いでしょう。
② 研修を受けます。
里親になられる方全員で研修を受けます。この時点で辞退する事も可能です。
本当に里親になるのかをしっかり考えて研修を受けましょう。
その後里親になる意思が固まれば、申請書を提出します。
③ 家庭訪問があります。
申請が受理されて数週間後に、児童相談所の方などがご自宅を訪問し生活の環境や家族関係について、同居する全ての人に聞き取りします。
④ 審査が行われます。
家庭訪問の内容などを踏まえて、審議会で里親になられるのに適しているかどうかの審査をします。
⑤ 審査の結果、認められると里親として登録されます。
これから、受け入れをする子どもの紹介が始まります。
里親になると支給される手当
里親になると、国から子どもを育てる為の費用が支給されます。いくら支給されるのでしょうか。
① 里親手当
月額10万円前後の手当が里親に支給されます。
② 一般生活費
月額5~6万円前後の金額が子どもに支給されます。
③ その他
学費、進学の為の支度費、医療費などが支給されます。
④ 市区町村からの手当
市区町村によって金額や条件は違いますが、手当があります。
普通養子縁組と特別養子縁組の違い
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があります。何が違うのでしょうか。
大まかには生みの親との関係が続くのが普通養子縁組、続かないのが特別養子縁組です。
細かく見てゆきましょう。
条件の違い
「普通養子縁組」
市役所等に養子縁組届を提出するだけです。
「特別養子縁組」
・育ての親に配偶者がいる事(単身の方・内縁関係の方はできません)
・育ての親の年齢が25歳以上である事
・養子の年齢は15歳まで(例外規定もあります)
・養子の年齢が15歳以上の時は本人の同意が必要
・6か月以上の監護期間(同居の期間)が必要
・生みの親が育てられない(不適当と判断される)
戸籍の違い
「普通養子縁組」
養子と記載されます。
「特別養子縁組」
実の子として(長男・長女など)記載されます
法的な立場の違い
「普通養子縁組」
生みの親、育ての親両方の相続人になれます。
「特別養子縁組」
育ての親の相続人にしかなれません。
養子縁組の解消が出来るかどうか
「普通養子縁組」
原則、同意があれば出来ます。
「特別養子縁組」
原則、出来ません。
まとめ
・里親と養子縁組は全く違う
・里親はあくまでも子どもを預かっている
・里親には里親手当がある
・途中で生みの親の申出によって解消される事もある
・養子縁組には普通養子縁組と特別養子縁組がある
・普通養子縁組は条件は少ないが戸籍を見れば養子である事が直ぐにわかる
・特別養子縁組には沢山の条件がある
まず、ご自分の子ども(実子)として育てるのかどうか、で里親と養子縁組のどちらを選ぶかを決める事になります。児童相談所と納得できるまでじっくり相談されるのが良いです。
日本では生みの親の元で育てられる子どもが約45,000人いて、その約8割が乳児院やじどう養護施設などで暮らしています。
里親と養子縁組はこのような保護が必要な子どもに一般家庭での養育を提供する制度ですが、まだまだ日本では馴染みが薄いです。
沢山の方に正しい知識と理解を持っていただき、一人でも多くの子どもが温かい家庭環境で育つ事のできる社会になれば良いと思います。