テレビのコメンテーターというのは、ときどき難解な言葉を遣います。
自分を知的に見せるためなのか、つい使ってみたくなるんでしょうね。
さて、そんな言葉の中で、今回取り上げたいのが、「ルサンチマン」。
あなたは意味を説明できますか?
そこで、「ルサンチマン」の意味や使い方をわかりやすく解説したいと思います。
ルサンチマンとはどういう意味?
ルサンチマンはフランス語で、ressentimentと表記します。
意味は「弱者が強者に対して恨み・妬み・嫉みなどの感情を持つこと」
簡単に言えば、「嫉妬心」ですね。
ルサンチマンは哲学用語で、デンマークの思想家キルケゴールが定義づけたものです。
キルケゴールは「恨みや妬みが強くなると、その相手を陥れようとする」として、そうした人物を批判しました。
この「ルサンチマン」を再定義したのが、フランスの哲学者ニーチェでした。
ニーチェが定義した「ルサンチマン」
ニーチェは社会の中では、弱者や被支配者をこう定義しました。
「支配者や強者への憎悪を溜め込んでいる」
そこで、「弱者の道徳」から成り立つのが、ルサンチマンであるとしたのです。
ニーチェは代表作「ツァラトゥストラはかく語りき」の中で、ルサンチマンをこう表現しています。
「無力によって起きる歯ぎしりや復讐心」
キルケゴールはルサンチマンを持つ人を批判しましたが、ニーチェは、ルサンチマンは人間の本質であると考えたのです。
晩年は不遇だったニーチェ
ニーチェは歴史に残る哲学者として知られますが、実は晩年は不遇でした。
発表した作品は誰からも認めらず、愛した女性は他の男の元に去り、身体も壊しました。
普通の人間がこうした境遇に陥ると、人や社会を恨んでしまうものです。
そう、まさに「ルサンチマン」状態です。
しかし、ニーチェはこれはよくないと考えました。
「ルサンチマン」は人間が喜びを感じる力を弱くする。
そうなると、何を見てもマイナス思考になってしまう。
すると、自分の住む世界は「ルサンチマン」であふれてしまう。
では、ニーチェはこの状況をどうやって乗り越えようと考えたのか?
ささやかな喜びを感じることが必要だとしました。
そのためには、「価値観の転換」訴えたのです。
たとえば、こんな考え方です。
「あの人は恵まれているように見えるが、自己中心的で人間としては失格だ。
あの人に比べると、私は恵まれない境遇だが、一生懸命頑張って生きている。
だから私の方が素晴らしい」
ルサンチマンの使い方
ルサンチマンという言葉はどんな風に使えばいいのか?
恨みや嫉妬をルサンチマンに言い換えればいいのです。
「現代人はルサンチマンに満ちている」
「彼はルサンチマンを抱えながら、この世を去った」
こんな感じで、「ルサンチマン」を使えば、ちょっと知的な印象を相手に与えられます。
おわりに
「ルサンチマン」という言葉についてご紹介しましたが、同じ「恨み」や「嫉妬」でも「ルサンチマン」と言われると、なんとなく受け入れてしまいますね。
最近は「証拠」とか「裏付け」をエビデンスという言い方をよくしますが、これも知的でありたいという人間の性なのかもしれません。
そんな言葉をあなたも探してみてはいかがでしょうか?