飲食店で働いていると、迷惑な客に遭遇することがありますね。
店側には何の落ち度もないにもかかわらず、理不尽なクレームを付けてきたり、ひどい場合は暴れ出したり・・・。
そんな迷惑な客を出禁にすることはできるのでしょうか?
そこで、マナーを守らない迷惑な客への対処法をご紹介します。
飲食店は客を出禁にできる?
実は「出禁」という法律用語はありません。
法律で出禁に関しての明確な規則はありませんが、民法の考え方の一に「契約自由の原則」というものがあります。
これはどのような人と契約するかは自由で制限されないという原則です。
例えばお店側がサービスを提供したくない、商品を売りたくないと考えれば「契約しない」という選択をすることができます。
飲食店やスーパー、コンビニといったお店には「店内スペース」というものが当然ありますが、これはあくまで所有権はお店側が持っています。
こうした「お店が所有するスペース」の秩序を守るために、一定の人に対して「出禁」にすることも施設管理権から認められています。
しかし、人種差別につながるような出禁や明確な理由のない出禁については、不法行為として損害賠償を負う可能性があるので慎重に検討する必要があります。
迷惑客を出禁にする伝え方
お店によって「出禁にしたい」と思う理由が様々だと思いますが、大切なのは「法的効力」があるかどうかに気をつけなければなりません。
例えば、お店側が出禁を通知した場合、それ以降もお店に居座ったり、入店しつこく迫ったりした場合、その人は不退去罪や建造物侵入になる可能性があります。
また、民事の場合でも他のお客に迷惑をかけたり、店側に損害が生じた場合には損害賠償請求をできる可能性が出てきます。
実際に賠償請求が認められるかはその時の状況によりますが、お店側が明確に「出禁」の旨を通知することで相手に法的効力を及ぼすことにはなります。
悪質な迷惑客を出禁にする時の注意点
迷惑客に出禁の通知をする場合、一番に気をつけなければならないことは理由を明確に伝える事です。
曖昧な伝え方をしてしまうと、相手も「何で悪いんだ」と思ってしまいます。
ですので、ハッキリとこういった理由で受け入れられないと伝えることが大切です。
それでも言った言わないにというなる場合もありますので、録音しておくことをお勧めします。
2人の会話を録音することは、法律上問題ないので携帯などで録音しておくと後に起こる可能性があるトラブルを防ぐことができます。
難しい問題であるのがドレスコードやマスク着用など法律で禁止されていないこと。
法律で禁止はされていませんが、こちらもお店側が雰囲気を保つ為や他のお客を不快に思わせない為にお店側の裁量によってできる事です。
これらの理由でも「お店のルール」ですので入店を拒否できることができます。
出禁が法律上違反になるケース
最初にお伝えしたように人種差別につながるような出禁や明確な理由のない出禁は違反になるケースがあります。
障害があることや国籍が異なることを理由に入店拒否、サービスの提供拒否、制限、条件をつけたりなどの行為は不当な差別取り扱いになると考えられます。
営業に支障が出るという理由で盲導犬や車椅子などの障害者を入店拒否した場合、障害者差別解消法違反に該当する可能性があります。
また差別的に外国人の入店を拒否した場合も「レイシャル・ハラスメント」に該当する可能性があります。
「レイシャル・ハラスメント」とは海外にルーツがある方に対して、人種や民族、国籍などの違いに基づく差別的な行為、言動、不利益な取り扱いを指します。
まとめ
出禁はお店側のルールでお客に伝えることはできますが、「伝え方」は慎重に行う必要があります。お客の入店拒否を検討する際には、弁護士に相談することをお勧めします。
入店拒否は大きな決断です。リスクやレピュテーショナルリスクを極小化する為にも事前に相談しておくと良いかもしれません。
思いのよらぬところでトラブルは起こってしまうものですが、感情的にならず冷静に対応することを考えながら、お店側はお客に対して明確な伝え方を心がける必要もあるでしょう。