SNSなどによる誹謗中傷が後を絶たない中、法改正された侮辱罪が2022年7月7日から施行されます。
今回の改正により、量刑が重くなる他、時効も1年から3年に延長されます。
時効の延長は被害者にとってはいいことですが、わかりにくいと思う人も多いのではないでしょうか?
たとえば、SNSの場合、改正前の書き込みも3年に伸びるのか?
また、3年は書き込みが始まった日なのか、終わった日なのか?
そこで、侮辱罪で知っておきたいこと、そして時効にまつわる疑問について調べてみました。
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侮辱罪とは?
侮辱罪は、事実を摘示せずに、「公然と人を侮辱した」と認められたときに適用されます。
不特定又は多数の人が認識できる状態で、軽蔑する表示を行うと、侮辱罪の要件に当たることになります。
侮辱罪の要件
具体的には、
・大勢の人がいる前での侮辱発言
・不特定・多数のユーザーが自由に閲覧できるインターネット上の誹謗中傷
これらが侮辱罪が成立する要件となります。
そして、注意しておきたいのは、侮辱罪は「親告罪」であるということ。
このため、被害者からの告訴がないと加害者の処罰を求めることができません。
侮辱罪の刑罰
侮辱罪の法定刑は、これまで「拘留又は科料」でしたが、法改正により、「1年以下の懲役若しくは禁錮若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」に引き上げられました。
<注>「拘留又は科料」
「拘留」は1日以上30日未満、刑事施設に拘置する刑(刑法16条)。
「科料」は1,000円以上1万円未満の金銭を支払う刑(刑法17条)。
※侮辱罪の法定刑の引上げ後も軽い刑に適用するため、「拘留又は科料」を残されています。
侮辱罪の時効で知っておきたいこと
侮辱罪の時効はこれまでの1年から3年に延長されました。
しかし、この時効をめぐってはいくつかおさえておくべきポイントがあります。
侮辱罪の時効の起点はいつから?
侮辱罪の時効3年は犯罪行為が終了した時から起算されます。
誹謗中傷する投稿が最初に行われた時ではありません。
例えば、Aさんを誹謗中傷する投稿が最後に行われたのが、2022年7月1日だとすると、時効は3年後の2025年7月1日になります。
法改正前の侮辱罪の時効は1年?3年?
法律が改正される前に行われた誹謗中傷の時効は、その行為が1年以内であれば時効は3年となります。
ただし、1年以上経っていると、旧法律の時効1年が適用されるため時効が成立し、罪に問えなくなります。
侮辱罪と名誉棄損罪の違い
刑法では、個人の名誉を侵害する犯罪として、「侮辱罪」と「名誉毀損罪」とを定めています。
両者の違いは何なのでしょうか。
それは「事実を摘示したか否か」です。
名誉毀損罪は事実を摘示して、公然と、人の社会的評価を下げる行為を処罰するもの。
一方、侮辱罪は、事実の摘示をせずに、公然と、人の社会的評価を下げる行為を処罰するものです。
ここで重要なのは「事実」の解釈です。
根も葉もない嘘や噂の場合は、名誉毀損に当たらないと思うかもしれませんが、名誉毀損罪が成立します。
名誉毀損が成立するために必要な「事実」は、「真実」である必要はないからです。
ただし、摘示された事実が「公共の利害に関する事実」であり、「真実であることが立証された」場合は名誉毀損罪は成立しません。
侮辱罪の時効のまとめ
SNSなどによる誹謗中傷を減らすために改正された侮辱罪。
法定刑の引上げにより、憲法が保障する表現の自由を侵害するのでは?という声もあります。
これに対し、法務省は 「今回の改正は、侮辱罪の法定刑を引き上げるのみであり、侮辱罪が成立する範囲は全く変わりません」としています。
いずれにしろ、時効がこれまでの1年から3年に延長されたことで、犯罪の抑止力につながることを願いたいですね。