経済のニュースを見ていて、よく出てくるのが「新自由主義」という言葉。
言葉通り読むと、「新しい自由主義」ですが、そもそも「新自由主義」とは何なのか?
「自由主義」とはどこが違うのか?
そこで、新自由主義について、わかりやすく解説したいと思います。
自由主義とはそもそも何?
自由主義は英語でリベラリズム(liberalism)。
王政時代のイギリスで生まれた近代思想で、「人間は理性を持ち従来の権威から自由であるべき」という考え方です。
王様の絶対権力を否定するために生まれたのが「自由主義」です。
自由主義は経済の分野においても、資本主義経済の発展に大きく貢献しました。
自由主義が理想とする社会は「夜警国家」です。
国がやるべき事は社会が無秩序状態にならないように見張ること。
それ以外の経済活動などは市場にまかせるという考え方です。
国が介入しなくても、市場にすべてを任せておけば、需要と供給のバランスが自然に取られ、経済は安定するというわけです。
自由主義の限界
しかし、自由主義の考え方は1929年の世界恐慌によって一変しました。
長引く不況から脱出するためには、市場に任せるだけではダメだと考えられるようになったのです。
そこで、注目されたのがケインズ経済学でした。
ケインズは「不況の原因は需要不足にある」と主張。
需要を生み出すには政府の積極的な関与が必要だと唱えたのです。
減税や公共投資で社会にお金を回せば、消費が活発になり、景気が良くなるという訳です。
このケインズ経済学を取り入れたのが、アメリカのルーズベルト大統領。
公共事業へ巨額な金を投入し、大規模な雇用政策を実施したのです。
これが有名なニューディール政策です。
ニューディール政策は結果的に成功し、アメリカの繁栄の礎となりましたが、長くは続きませんでした。
1970年代に起きたオイルショックによって経済が停滞。
失業者が増え、インフレが加速しました。
このとき、経済停滞の原因とされたが、「大きな政府」でした。
政府の規模が大きくなったことで、様々な規制や税負担が強いられるようになり、これが自由な経済活動を妨げているという考えられるようになりました。
そして、登場したのが新自由主義だったのです。
新自由主義の登場
新自由主義は自由主義の反省から3つの経済政策が柱となっています。
①小さな政府
②規制緩和
③自由化
アメリカで新自由主義を進めたのは、レーガン大統領。
大幅減税と規制緩和を行う「レーガノミクス」と呼ばれる政策を導入し、市場原理を大幅に取り入れたのです。
この新自由主義はイギリスのサッチャー首相、日本の中曽根総理も取り入れました。
その代表的な政策が民営化です。
中曽根総理は旧国鉄を民営化し、JRが誕生。
電電公社はNTTに、専売公社はJTに民営化しました。
こうした政策はのちの小泉政権にも引き継がれ、郵政民営化、道路公団の民営化が実行されました。
新自由主義のメリットとは?
新自由主義には以下のようなメリットがあります。
- 規制緩和によって経済が活性化する
- 自由競争によって、より安く質の良いサービスが提供される
- 小さな政府にすることで、国の仕事が減るため税金が安くなる
- 公務員を削減できる
- 民営化によって国の税収が増える
しかし、新自由主義はいいことばかりではありませんでした。
新自由主義のデメリットとは?
新自由主義には以下のようなデメリットがあります。
- 自由競争によって力のある者に富が集中する
- 実力主義のため、貧富の格差が広がる
- 政府のセーフティーネットが小さく、社会保障が少ない
- 競争が激化すればデフレのリスクが高まる
- 小さな政府のため新型コロナのような緊急事態に対応しづらくなる
おわりに
「新自由主義」について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
規制を緩和して自由競争を促進すれば、経済は活性化しますが、行き過ぎると貧富の差が拡大して不安定な社会になります。
また、国の社会保障制度も手薄になるため、貧困問題が深刻化します。
政府はどのようにして国民の生活を守るのか?
新自由主義には解決しなければならない多くの課題があるのです。